帝京大学ラーニングテクノロジー開発室15周年記念シンポジウム

 ラーニングテクノロジー(LT)開発室15周年記念シンポジウムを,2018年9月22日に帝京大学宇都宮キャンパスで開催しました. 本シンポジウムでは「学習管理システムLMS活用のこれまでとこれから」をテーマとして,4つの大学におけるLMS活用の現状について情報共有した上で,LMS活用の今後について議論しました. 本シンポジウムには,学内外の高等教育機関教職員ならびに教育ITソリューションを扱うベンダーから51名の参加がありました.

 開催にあたって最初に,帝京大学冲永佳史理事長・学長からご挨拶をいただきました. LT開発室が開設された当初の本学の状況とLMS導入の目的についてご説明いただいたのち,LMS活用をさらに洗練化することの重要性と,それに向けた本シンポジウムの意義についてお話しいただきました.

 

 続いてLT開発室長の渡辺博芳教授が,本シンポジウムの趣旨説明と帝京大学におけるLMS活用についての講演を行いました. 本シンポジウムの目的はLMS活用を振り返って今後の展望を考えること,ならびに複数の大学間で異なるLMSの状況を共有することにあり,LMSの普及が推進した現状と今後の課題としてLMS活用のための支援や大学の制度,大学内システム間連携,クラウドサービス・モバイルコンピューティング・BYOD(Bring Your Own Devices)といった昨今の潮流への対応,LA(Learning Analytics)・EdTech・AIへの期待が挙げられました. その上で,LMSに関する帝京大学やその他国内外の状況についての紹介がありました.

 主催者講演に続いて,4大学からの招待講演がありました.

(1)広島大学

 広島大学情報メディア教育研究センター隅谷孝洋准教授より「たちまちBb9!」と題して,広島大学で導入されているLMSであるBlackboard Learn(Bb)の利用状況や支援体制についてご講演いただきました. 「たちまち」は広島弁で「とりあえず」を意味し,使えそうなことにはとりあえずBbを使うという方針を目指しているとのことでした. 履修登録システムSIS(Student-Information System)と連携して教員や学生がLMSを利用する方法や,種々の学内研修におけるLMSの利用,利用状況のデータをご紹介いただきました. また,今後の課題として授業中の利用促進,利用方法の高度化や利用実態の分析,著作権の問題,支援者の人的資源の問題をご提起いただきました.

(2)追手門学院大学

 追手門学院大学経済学部の杤尾真一准教授より「OCR連携とタイムライン機能の活用」と題して,追手門学院大学で導入されているWebClassとその連携システムの利用状況についてご講演いただきました. 追手門学院大学は文系学部が中心であり,紙に手書きで学習活動をさせる授業が多いことから,OCR(Optical Character Recognition)によってLMSに登録させる機能を中心に,LMSの活用事例をご紹介いただきました. また,学生の利用状況やアンケート回答をご提示いただき,学生のLMS利用の実態についての事例をご紹介いただきました.

(3)信州大学

 信州大学e-Learningセンターの新村正明准教授より「オープンソースLMS運用のメリット・デメリット」と題して,信州大学で導入されているMoodleを中心として,オープンソースであるLMSを運用してきた事例とポリシーについてご講演いただきました. 信州大学は8学部の独立性が高く,4つのキャンパスが遠く離れているという事情もあり,学部ごと・学年ごとに異なるMoodleを提供するという運用方法を,学内システムとの連携方法とあわせてご紹介いただきました. また,LMS運用や支援体制について,コストやホスピタリティの観点からご解説いただきました.

(4)京都大学

 京都大学情報環境機構IT 企画室の梶田将司教授より「PandAのキセキ」と題して,京都大学で導入されているPandA(Sakai)を含む教育情報システムの状況と,今後の課題についてご講演いただきました. 大学の3ポリシーに基づく評価の下でのエビデンスに基づく学びの質保証と教育のPDCAを実行するフレームワークにより,2030年に京都大学が国際的に評価されたというニュースに至るまでの仮想ストーリに沿って,今後の課題についてご解説いただきました. 教育学習支援システムやデータの標準化規格の取り組みに加え,人的・財政的リソースの限界に対する対応策として大学間でのICT資産蓄積のための協働基盤をご提起いただきました.

 講演に続いてのパネルディスカッションでは,講演中に聴衆から投稿された質問に講演者が回答する形式で,LMS活用の現状と今後について議論がなされました. LMS・BYOD・ポートフォリオなどの導入の方法,LMS支援部局の立ち上げの経緯,学習データ活用のための課題,LMS支援のための人的資源の課題などについて,意見交換が行われました.

 

 最後に帝京大学理工学部長波江野勉教授から,閉会のご挨拶をいただきました. LMS活用を推進する信念の重要性,LMSを中心として大学のICTインフラ整理が進むことへの期待,本シンポジウムをきっかけとした今後の展望についてお話しいただきました.

参加者人数
日時教員職員院生・学生合計
2018/09/22(土)13:15~21(11)19(19)11(11)51(41)
()内の数字はスタッフを含まない人数です.
シンポジウムコンテンツ
開催案内

「学習管理システムLMS活用のこれまでとこれから」

 ラーニングテクノロジー開発室は,2018年10月に15周年を迎えます.設立以来,学習管理システム(LMS)を中心として授業改善のためのテクノロジーの普及と利用支援に取り組んできました.LMSはインターネットを介して,教材や連絡事項の提示,クイズ・課題等のアセスメント,フォーラム等によるコミュニケーション,成績表管理などを行える教育のための情報通信基盤です.ラーニングテクノロジー開発室が設立した当時は,LMSの導入が始められた時期であり,LMSの利用者を如何に増やすかといった点に関心がありました.15年を経過した今,多くの大学で一定程度の教員がLMSを利用するようになり,中には利用率がかなり高い大学もあります.また,教務システム,出欠管理システム,ポートフォリオシステムなどと連携をする事例も多く,文字通り「教育のための情報通信基盤」となっています.
 一方,近年,高大接続システム改革が進められる中,アクティブ・ラーニングの導入,能動的学習への転換等が叫ばれ,ファカルティディベロップメント(FD)も盛んになってきています.また,EdTechやラーニング・アナリティクス(LA)など新たなテクノロジーが登場してきました.こうした状況の中,今後,どのようにLMS活用を進めてゆけばよいのでしょうか.
 本シンポジウムでは,いくつかの大学におけるLMS活用の現状について情報共有した上で,LMS活用の今後について考えたいと思います.

「学習管理システムLMS活用のこれまでとこれから」

○開催概要
○参加申し込み

下記の参加申込フォームよりお申し込みください.シンポジウム終了後に懇親会を予定しております.懇親会への参加も併せて下記フォームにご入力ください.
参加申込フォーム:https://goo.gl/forms/qBHzgslfCk9BBKw02

○プログラム(予定)
スケジュール内容
13:15-13:25開会挨拶
 帝京大学 冲永佳史 理事長・学長
13:25-13:45主催者講演 「趣旨説明と帝京大学におけるLMS活用」
 帝京大学ラーニングテクノロジー開発室 渡辺 博芳 教授
13:45-14:15招待講演1
「たちまちBb9!」
 ( 広島大学情報メディア教育研究センター 隅谷 孝洋 准教授 )
14:15-14:45招待講演2
「OCR連携とタイムライン機能の活用」
 ( 追手門学院大学経済学部 杤尾 真一 准教授 )
14:45-14:55休憩
14:55-15:25招待講演3
「オープンソースLMS運用のメリット・デメリット」
 ( 信州大学e-Learningセンター 新村 正明 准教授 )
15:25-15:55招待講演4
「PandA のキセキ」
 ( 京都大学情報環境機構IT企画室 梶田 将司 教授 )
15:55-16:05休憩
16:05-16:50パネルディスカッション
 「学習管理システムLMS活用のこれまでとこれから」
16:50-17:00閉会挨拶
17:15-18:45懇親会
開催案内ポスター